ヤス: これから起こる可能性のあること(2008)~2008年リーマンショック


これから起こる可能性のあること
2008年8月26日
2008年9月20日
2008年10月11日
■リーマンの経営破綻とAIGの救済
フレディーマックとファニーメイの政府系住宅金融機関の破綻がいよいよ避けられなくなり、FRBが約20兆円に上る公的資金の投入を決定してからというもの、海外でも日本でもネットは金融メルトダウンと米国経済破綻を予告する情報があふれている。
今回のリーマン・ブラザースの経営破綻、及び大手保険会社、AIGの9兆円に上る公的融資投入のニュースは、金融のメルトダウンが本格化し、米国経済破綻の 過程が加速しているとの印象を与えている。これは、かねてからラビ・バトらーなど多くの予言者が予告していた「資本主義崩壊」の過程がぃよいよ始まったの ではないかと考える人も多い。
もちろん、リーマン・ブラザースのような巨大金融機関の経営破綻が、他の金融機関の連鎖倒産へとつながり、金融システム全体の機能停止とメルトダウンにいたる可能性はないとはいえない。
しかしながら、金融メルトダウンが現実的な事態として考えられるのかといえば、いまのところそのような可能性は低いのではないか考えられる。
■何度も繰り返された金融破綻
資本主義経済は、過去に何度も金融破綻や金融メルトダウンという表現に近い経験をしてきている。むしろ資本主義経済にとって金融破綻は、過剰となった資本を整理し、新たな体制で成長軌道に乗るために必要なプロセス、すなわち「創造的な破壊」であるともいわれている。
したがって、資本主義の歴史では金融破綻は決して珍しいことではなく、ましてや金融破綻が資本主儀というシステムそのものの崩壊に結び付くものではない。
バブルの崩壊から大量の不良債権ができてしまい、これの圧力による貸渋りしなどによって著しく成長が鈍化したバブル期以降の日本では、一時期、金融機関の破 綻処理を一気にやり不良債権を処理することが経済を回復させる唯一の方法だともいわれたが、このような理解も「創造的破壊」の考え方に依拠したものであ る。
なので、資本主義経済にとって金融破綻は新陳代謝のひとつであり、それは何度も繰り返されてきた。比較的最近では1929年の「暗黒の木曜日」に端を発する「大恐慌」、そして1987年の貯蓄信用貸し付け機関の破綻から始まった「ブラックマンデー」である。
過去の金融破綻に共通した特徴
このように、金融破綻は過去何度も繰り返されてきたわけだが、そこには共通した特徴が存在するといわれている。それは、株のパニック売りによる相場の暴落である。
相場の暴落は経営基盤の弱くなっている企業を直撃し、連鎖倒産へと追い込むが、それだけではなく、損の拡大を回避しようとして、投資家は、債権、不動産など さまざまな分野から一気に投資を引き上げてしまうので、これによって実態経済全体の収縮が起こるのである。以下の図式である。
「株や債権のパニック売り」→「企業の資金繰りの悪化」→「連鎖倒産」→「各分野からの投資の引き上げ」→「実体経済の収縮」
1929年の「暗黒の木曜日」はこれに典型であったが、1987年の「ブラックマンデー」では、経営破綻しつつあった金融機関にFRBによる公的資金の投入による救済が行われ、実体経済への拡大は回避された。ぎりぎりで金融破綻は回避されたのである。
ではリーマンの破綻は?
では今回のリーマンの経営破綻はどうなのだろうか?結論から言えばパニック売りは発生しなかった。リーマンの破綻発表の一日はさすがに下げたが、AIGの救済策が発表されるとダウは値を戻した。最終的には思ったほどの下落はなかったのである。
さらに、昨日は大きく下げたが、本日は、FRBの不良債権買い取り機構に対する期待もあり、ダウは大きく反発し410ドルも上がった。
ま た、FRBが各国の中央銀行に巨額のドルを散布することでいわゆる流動性の危機といわれる状況も回避された。金融機関は、日々の決済に必要な資金を短期の 融資で互いに融通しあうことで円滑なビジネスを維持しているが、金融機関の経営破綻の懸念が高まるにつれ、こうした短期融資に応じにくくなってくる。経営 破綻してしまい、融資した金が返済されない可能性があるからである。短期融資を得られない金融機関は決済に困り、そのまま破綻するしかなくなる。FRBの ドル散布は、大量のドルを金融機関に供給することで、こうした破綻を回避したのである。
市場のこうした展開やFRBの政策をみると、やは りパニックは発生していないとみたほうが妥当なようだ。したがっていまわれわれが経験していることは、過去何度も繰り返された金融破綻に近いものではある が、その性格は1929年の「大恐慌」のようなパニック型の恐慌とは根本的に異なっているといえそうである。
ましてや、資本主義の崩壊の始まりとなるような「資本主義の体制的な危機」とは程遠いように思う。
ストラトフォーなどのシンクタンクの評価
この辺の分析にやはり定評があるのがストラトフォーなのではないかと思う。数本の記事の内容を以下に簡単にまとめる。あまりに楽観的な見通しと考える読者の方が多いのではないかと思うが、ぜひ一読願いたい。
・金融機関、金融システム、実体経済の三者は分けて考えなければならない。
・基本的にいま起こっていることは、個々の金融機関の破綻であり、金融システムそのものや実体経済をも破綻させるような影響力はもってはない。
・また今回は、パニック売りによる相場の暴落も発生しなかったので、金融システムや実体経済に対する影響も思ったほどには大きくはないはずだ。
・米国の実体経済は、住宅価格の低迷や失業率の上昇などで明らかに減速し、将来はリセッションに突入する可能性が高いが、思った以上に堅調で持ちこたえている。直近のリセッションは7年前だから、そろそろリセッションが起こってもよい時期だ。
・最近では米国は、1991年と2001年に金融収縮を伴う企業破綻を経験したが、今回はせいぜい2001年のドットコムバブルがはじけたときと同じくらいの程度のものだろう。
・2000年後半から2001年には、ワールドコム、エンロンなど名だたる世界企業の倒産が相次いだが、今回のリーマンの破綻も、過去に何度も発生した「創造的破壊」と同じようなものだ。
・金融システムは再編され、新たな循環がまた始まる。
これはあまりに楽観的な見方で現実を反映していないのではないかと考えることもできるだろう。
例えば、ストラトフォーなどはデリバティブの一形態である「CDS」の危険性については言及していない。いま連鎖倒産が起こるとすれば、それはCDSを経由してであろうと考えられている。
■CDSとは?
CDSは「クレジット・デフォルト・スワップ」といわれるデリバティブ(金融派生商品)のひとつである。これがどういうものかウィキペディアを引用して解説する。
仕組み
2者間(買い手と売り手)の間で結ばれた次のような契約である。買い手が企業A(参照企業という)への貸付債権や社債を持っている場合などを想定するとわかりやすい。
・ 買い手は売り手に定期的にプレミアム(保険料)を支払う。
・売り手は企業Aがデフォルトした際に、あらかじめ決められたルールに従いその買い手の損失を補償する。
企業Aに対して貸付債権などを持っている銀行がCDSを購入することにより、貸倒れのリスクをヘッジすることが可能となる。
要するにCDSとは、保険会社ではなく、銀行や証券会社が発行する、債権の保険のことである。CDSの購入者は、債権の支払者が破綻した場合、損失の補填をCDSの発行者から受けることができる。
CDSはそれ自体が金融商品として証券化され、市場で取引される。
リーマンのCDSと金融機関の連鎖倒産
どの投資銀行にとっても債権の発行は資金を調達する重要な手段である。リーマンも莫大な債権を発行していた。当然、それに対応するだけの巨額なCDSも発行されている。
ということは、リーマンの破綻は、リーマンの債権者が損失を補填しようとCDSの支払いを、これを発行した銀行や証券会社に請求してくることを意味する。
これは莫大な額に及ぶ。その支払いに応じられない金融機関は破綻し、倒産が連鎖する可能性がある。金融機関の連鎖倒産は金融システム全体を麻痺させ、実体経済を巻き込んで行く。以下の図式である。
「リーマンの破綻」→「巨額のCDSの支払い請求の殺到」→「金融機関の連鎖倒産」→「金融システムのメルトダウン」→「実体経済の凋落」
これが近い将来起こる可能性
では、このような連鎖倒産から金融のメルトダウンにぃたる可能性はあるのだろうか?海外でも日本でも、これが近い将来起こる可能性を指摘しているサイトは多い。
CDSによる連鎖倒産の可能性は低い
CDSは、危険度が高まれば数値が上昇し、危険度が低くなれば下がるが、確かに昨日は、CDSの数値は史上最高値を記録し、CDSの支払い請求集中による連鎖倒産が近いことをによわせた。
しかしながら本日になると、米国政府の不良債権買い取り機構の設立へと向かう動きが報じられるにおよび、CDSの数値は大きく下げ、もとの水準に近くなった。
さらに、リーマンの破綻はすでに半年前から懸念されており、投資銀行ではリーマンのCDSは放出されており、実際の保有高はたいしたことはないともいわれている。
また、リーマンの破綻が決定された時期には、リーマンの債権がらみのCDSの多くはすでに保証期間が切れており、もともとCDSの実質的な額はさほど大きくはないともいう。
したがって、リーマンのCDSが引き金となる金融機関の破綻の可能性は少ないだろうという。
■金融業界の再編成
一般に懸念されている金融機関の連鎖倒産が起こらないとすれば、それでは実際は何が起こっているのだろうか?
それは、グローバル経済の花形であった投資銀行の生き残りをかけたサバイバルというかたちで、金融業界全体の再編成が急ピッチで進んでいるということだ。大 手商業銀行バンク・オブ・アメリカが投資銀行メリルリンチの救済合併を発表したばかりだが、そのサバイバルは、他の金融機関への身売りという形で行われて いる。
「モルガン・スタンレーは多くの金融機関に対し交渉の窓口を開いている。交渉相手としては中国やシンガポールの政府系ファンド (SWF)も含まれる。また関係者の話によると、米商業銀行大手ワコビアや英HSBC、ドイツ銀行との交渉も行われているという。英国では英銀大手ロイズ TSBが住宅融資最大手の大手英銀HBOSを122億ポンド(約2兆3千億円)で救済合併することで合意した。米西岸を中心に広まる大手銀ワシントン・ ミューチュアルはゴールドマン・サックス、ウェルズ・ファーゴ、JPモルガン・チェースや英HSBCに対して売却交渉中であると報じられている。」
商業銀行が全面に出た金融機関の再編成
この再編で重要な役割を果たしているのは、これまであまり表舞台には出てこなかった商業銀行である。
投資銀行は、顧客企業の資本市場からの資金調達をサポートしたり、合併や買収などの財務戦略でのアドバイスを行い、個人向け業務は行わないのに対し、
商業銀行は、個人を含む顧客から預金を集め、それを企業に融資することで利子を得る金融機関である。両者はどちらも「銀行」と呼ばれているが、その業務内容は大きく異なっている。企業の正常な業務から利益を得る商業銀行のほうが利益率は断然小さいのが特徴だ。
メリルリンチを救済合併したバンク・オブ・アメリカも、モルガン・スタンレーの見売り先として交渉中のワコビアや英HSBC、さらにワシントン・ミューチュアルの売却先として検討されているウェルズ・ファーゴもすべて商業銀行である。
あ らかたの投資銀行は商業銀行に売却され、金融業界における、これまで巨大であった投資銀行の役割も、ヘッジファンドとともにはるかに小さいものとなる可能 性が大きい。これに伴い、これまで世界経済の成長を支えてきた、グローバルな資本移動に基づく経済成長モデルが破綻し、これとはまったく異なるモデルに移行する可能性が大きくなったように思う。
グローバル経済モデル
1995年以降、世界経済は、ドルを基軸通貨とし、資本の国際的な移動の自由に基づく市場原理主義的な成長モデルが牽引していた。
以前の記事にも詳しく書いたが、このモデルは、米国を市場として海外に解放し、米国が無制限に購入した商品の代金を基軸通貨であるドルで支払うことで成立した。
いっぽう、米国に商品を輸出した各国は、自国通貨が高くなることを恐れ、受け取ったドルを自国通貨に変換せず、そのままドル建てで米国に再投資してやるほかな くなる。米国はこのドルの還流をいっそう確実なものとするため、政策金利をどの国よりも高く設定しておけばよい。するとドルはいつでも米国に還流して、米 国経済を下支えしたのである。以下の図式だ。
「基軸通貨ドルによる輸入代金の支払い」→「自国通貨が高くなることを恐れた各国のドル建て投資の還流」→「還流したドルによる米国経済の下支え(国債、債権などあらゆる金融商品の購入)」
さらに、このように還流したドルのかなりの部分は、へッジファンドや投資銀行を経由して、世界へと再投資されていった。以下の図式である。
「基軸通貨ドルによる輸入代金の支払い」→「自国通貨が高くなることを恐れた各国のドル建て投資の還流」→「へッジファンドや投資銀行を介した世界への再投資」
この巨額な再投資を自国に呼び込むことに成功した中国のような国は高い経済成長率を達成し、それに失敗した日本のような国は伸び悩むというのがグローバル経済モデルがもたらした結果であった。
・そのためには、まだ発見が公表されていない二つの巨大油田、一つはインドネシア、もう一つはロシア北方の新規開発の油田の掘削で対応する。これらろ油田は莫大な供給量がある。
へッジファンドや投資銀行による投資を引き付けるためには、彼らのルール、すなわち1)株主中心主義(利益絶対主義)、2)財務内容の透明性、3)グローバル な会計基準など、要するに彼らの儲けが絶対的に保証される仕組みにルールを変更しなくてはならなかった。このルールの変更が、1)福利厚生の徹底的な削 減、2)人件費の削減を目標とした過度なリストラなどを生み、伝統的に先進国の社会的な安定性の基礎となっていた中産階級を解体に追い込んだ。以下の図式 である。
「へッジファンドや投資銀行を介した世界への再投資」→「投資を引き付けるための利益絶対主義のルールの適用」→「過度なリストラと人件費削減による中産階級の解体」→「格差の拡大」
この結果、周知のように、分厚い中産階級によって支えられていた先進国の社会は、ほんの一部の勝ち組と大多数の負け組に分離し、新たな社会不安を作り出した。
これがグローバル経済成長モデルの概要である。
崩壊するグローバル経済成長モデル
しかしながら、今回のリーマンを始め、多くの投資銀行やへッジファンドの破綻とその商業銀行による再編が表していることは、このモデルの担い手が消滅しつつあるということなのだ。
したがって、こうした金融機関が経済成長の牽引役を果たすことはもはやありえないだろう。ならば、へッジファンドや投資銀行を引き付けるための「ルール変 更」や「構造改革」なるものも、ほとんど意味を失うことになる。要するに、海外からの投資は経済成長の牽引力とはもはやなり得なくなりつつあるということ なのだ。
新たなモデル登場、一国資本主義の内包的発展モデル
では、これまでのグローバル経済成長モデルが崩壊したあとでもそれなりの経済成長が実現できるとすればそれはどのようなモデルなのだろうか?
まだ確実にはいえないが、おそらくそれは「一国資本主義型」の「内包的発展モデル」なのではないかと思う。
このモデルは、かつての日本の高度経済成長を支えた「ジャパンモデル」に近いモデルだ。それは、ほとんど外部の投資には依存せず、国家の公共投資が誘引する設備投資によって成長を達成するものである。以下の図式だ。
「国債や通貨の発行による財源確保」→「政府による巨額な公共投資」→「政府が後押しする巨大金融機関による長期融資の提供」→「民間の巨大な設備投資」→「雇用の拡大効果と賃金の上昇」→「国内需要の増大」→「企業の利潤率の上昇とさらなる設備投資」→「好景気の循環」
グローバル経済成長モデルの破綻後には、このモデルしか選択肢が残されていないのかもしれない。
一国資本主義型内包的発展モデルの勝ち組と負け組
このモデルにも適用に成功して発展する国(勝ち組)とそうではない国(負け組)があることは間違いない。だがそれは、グローバル経済成長モデルの勝ち組と負け組とは根本的に異なるはずだ。
グローバル経済成長モデルの勝ち組はヘッジファンドや投資銀行を引き付けることに成功した国であった。それに対し、一国資本主義型モデルでは、1)経済に対する強いコントロール権をもつ強力な政府、2)長期的な設備投資に融資できる強大な商業銀行、3)欠乏しつつある資源とエネルギー、および食料を確実に確 保できる政策とシステム、の3つがもっとも重要な条件となろう。
特に3)は重要である。一国資本主義型モデルは1940年代の後半から 70年代初頭まで(日本では80年代の終わりまで)支配的だったが、この当時は、二度のオイルショックはあったものの、資源とエネルギー、そして食料はほとんど無制限に手に入った。市場で購入すればよかったのである。
だが、現代はこれと状況はまったく異なる。環境異変も手伝い、資源とエネ ルギーや食料は確実に欠乏してきており、市場に依存していては、これらの戦略物資の安定的な確保はできにくくなりつつある。安定的に確保するためには、ロ シアや中国のような長期的な国家戦略がどうしても必要になるだろう。
すると、どのような国家が勝ち組になるのかがおぼろげながらはっきりしてこよう。それは、資源やエネルギー、そして食料の自給ができ、なおかつ強力な権限をもつ政府や政府系金融機関を有するような国家だろう。
もしかすると製造業、農業と商業銀行の時代
このような流れからみると、投資銀行やヘッジファンドの淘汰と消滅を含む今回の金融大再編は、巨大商業銀行の台頭へと道を開くことになるかもしれない。
さ らに、以前の記事にも書いたように、資源・エネルギー価格の高騰は輸送費の急速な高騰をもたらす。このため、中国などの新興国の製品は割高となり、自国の で生産した製品のほうが安くなるという逆転現象が起こる。この結果、新興国との競争に負け、一度壊滅した製造業や農業が再建される可能性が出てくる。
これらの国内産業を発展させるには、融資でそれを強力に後押しできる商業銀行が必要となる。当然、まだはっきりとはしていないが、今回の金融大再編は、次のモデルの中核となるこうした巨大商業銀行の出現を準備する可能性がある。
■急速に進む多極化
では、このような一国資本主義型内包的発展モデルに基づく強力な国家が作る次の世界経済はどのようなシステムとなるのであろうか?
もはやその答えは明らかであろう。それは、強力な国家群が支配する多極的なシステムである。
ただそれは単一の国家ではない。資源・エネルギー・食料が欠乏し、その安定的な供給を市場に頼れないとするならば、それは1)比較的に広いサバイバル圏をも ち自前で供給するか、2)サバイバル圏の形成に成功した国家との政治的な関係を深め、そうした国家から供給してもらうかのいずれかが必要になる。したがっ て、それは地域の覇権国家を中核に形成される「地域国家連合」であろう。
このように考えると、今回の金融危機は、随所でいわれているような「金融メルトダウン」や「金融崩壊」のような、金融システムの崩壊や、ましてや経済そのも のの崩壊を示す危機、つまり社会を支えている基本的なシステムの崩壊を表す現象ではまったくない。なので、いまの金融危機が、われわれに自給自足生活を強 いることになるようなことになるとは考えられない。
そうではなく、今回の危機は、世界経済の発展モデルの変更によるあらたな世界経済システム形成へと向けた動きだと解釈したほうが妥当だろう。
■グローバル経済モデルから一国資本主義内包的発展モデルへ
いま、1995年以来世界経済を牽引してきたグローバル経済の成長モデルが崩壊し、新たな一国資本主義内包的発展モデルへと移行しつつあることは先に記事に書いた。
だが、問題なのは、そのような移行がいま起こりつつあるとしても、その移行が大きな混乱やパニックがなく比較的にスムーズに行われるのか、それとも金融システムの崩壊のような激烈なパニックを伴うのかということである。
すなわち、不況下でなしくづしてきに行われる転換なのか、それとも1929年のような恐慌を伴うものなのかということだ。
住宅ローンの最大手の商業銀行、ワシントン・ミーチュアルの破綻が確定し、大手の商業銀行JPモルガン・チェースに買収されることが決定した。ワシントン・ミューチュアルの総資産は33兆ドルといわれ、米国史上最大の破綻だろいわれている。
投資銀行から始まった金融危機が、預金で運営されている商業銀行にまで確実に広がりつつあることが明らかになった。
だが、だからといってこの危機が恐慌の始まりであると断定するには少し早い。恐慌と不況とでは似ているようであっても、両者は根本的に異なっているからである。
これは恐慌なのか?それとも不況なのか?
不況と恐慌は根本的に異なる事態である。以下のような違いがある。
不況(リセッション)
資本主義はほぼ10年周期で好況と不況を循環的に繰り返す性質がある。好況期には投資や雇用が伸び、それによる国内需要も伸びるが、不況期には金融が収縮し投資も雇用も大きく沈滞するため、国内需要も伸び悩む。成長はマイナスに転じる。
2001年のドットコムバブル(ITバブル)の崩壊や1991年の第一次湾岸戦争直後に不況に突入している。すでに2001年の最後の不況から7年たっているので、不況に突入してもおかしくない時期だと考えられている。
恐慌(パニック)
相場の暴落や金融システムの崩壊や機能停止などのパニック型の混乱が発生し、それに伴う実体経済の急速な収縮が発生する。循環的に発生する事態ではないため、歴史的な事例は比較的に限られている。20世紀では1907年の恐慌、および1929年から始まった大恐慌がある。
要するに両者の違いは、不況が循環的に発生し、相場の暴落や金融システムそのものの機能停止は伴わないのに対し、恐慌はこうした激烈なパニックがすべて発生し、実体経済の急速な収縮を引き起こすことにある。
ところで、今回はリーマン・ブラザースが倒産し、ワシントン・ミューチュアル銀行が破綻したわけだが、規模の大きい企業が破綻したからといって、それがそのまま恐慌の発生を意味するわけではないことに注意しなければならない。2001年の不況時にはエンロン、ワールドコム、デジタルエクイップメント(DEC)、プライムコンピュータ、データージェネラルなど、当時のIT産業を担っていた大企業が多数破綻した。
だが、こうした企業の破綻は、金融システムの機能停止や相場の暴落、そして実体経済の急速な収縮などのパニックは発生しなかった。経済はゆっくりと減速し、なし崩し的にマイナス成長へと突入していったのである。
今回のリーマンやワシントン・ミューチュアルの破綻が、パニックを発生させて恐慌の引き金になるのか、または循環的な不況の突入を告げるものなのかは、まだ分からない。いまのところ、パニックは発生していない。
■1929年時点との違い
社会的条件の変化によって、1929年の時点では恐慌を発生させるに十分な出来事でも、2008年では恐慌がかならずしも発生しないことも十分にあり得る。今回のリーマンやワシントン・ミューチュアルの破綻はその好例だろうと思われる。
もしこのくらいの規模の破綻が1929年のような20世紀の初めに起こっていたなら、それは確実にパニックを発生させていた可能性がある。金融機関は相互に短期融資のネットワークで結ばれている。そのため、一つの大規模な金融機関が破綻して融資の返済が止まると、他の金融機関は疑心暗鬼に駆られ短期融資を停止させてしまう。すると、資金繰りに困った金融機関から連鎖的に倒産する結果となる。連鎖倒産は多くの金融機関を巻き込み、その結果、金融システム全体を崩壊させてしまうのである。以下の図式である。
「巨大金融機関の破綻」→「短期融資のネットワークの崩壊」→「金融機関の連鎖倒産」→「金融システムのメルトダウン」
実際、このようなことが1929年に起こった。だが、今回のリーマンやワシントン・ミューチュアルの破綻でこのようなことになるかといえば、かならずしもそうならない可能性が大きい。なぜなら、当時と今では社会的な条件が根本的に異なるからである。
■政府の介入と不介入
経済の法則、つまり商品経済的合理性(資本の論理といってもよい)は、万有引力の法則のような自然法則とはまったく異なっているといわれている。自然法則は人為によって変更することのできない絶対的なものであるのに対し、経済の法則は、少し条件を変えてやると大幅に変更することができるといわれている。
1929年当時と現代でもっとも異なっていることは、政府の経済に対する介入の度合いである。政府が経済に介入すると、政府の政策的な意図に合わせて結果が変更されるのに対し、政府がまったく不介入であれば、商品経済的合理性が貫徹し、経済の法則から予想される結果がもたらされる。1929年当時の政府が経済に対していわば無防備であり、介入するすべがなかったのに対し、現代の政府は経済に強く介入し、危機の発生と広がりを未然に防止できる様々な手段を持っている。この意味で、商品経済的合理性から予想される結果を大きく変更させることが可能なのが、現代の政府の特徴である。
リーマンの破綻が明らかになってから、各金融機関は短期融資に疑心暗鬼になっており、先に指摘した連鎖倒産が発生する恐れがあった。だが、これに対し、米国政府や各国政府は膨大なドル資金を直接金融機関に融資し、短期融資の連鎖が断ち切れて連鎖倒産が起こらないように未然に防止策をとっており、いまのところ成功している。
今の状態をひとことでいえば、本来は商品経済的合理性にのっとり連鎖倒産が起こり、パニックが発生してもおかしくない状況が、資金投入という政府の介入により、回避されているというのが現状だ。
では政府の政策的な介入は万能なのか?
では政府の政策的な介入は万能なのかといえばそうではない。金融機関の破綻の規模があまりに大きく、政府の資金の投入が十分ではない場合、金融機関の短期融資への疑心暗鬼は払拭できず、連鎖倒産は避けられなくなる。政府の資金投入が危機を回避させ、本来は発生してもおかしくない恐慌を、循環的な不況のレベルにソフトランディングさせることができるかどうかは、基本的に投入できる資金の大きさに依存しているといえるだろう。
これは換言するなら、危機の回避は、商品経済的合理性のモメントが勝つのか、それとも政策的関与のモメントによって押さえ込みに成功するのかによって決まってくるということだ。なので、実際の経済は、両モメントが相克する複雑な動きを呈する。今回のリーマンやワシントン・ミューチュアルの破綻からすぐに恐慌の発生を予想することができないのはこのためだ。
■米国政府の再建買取機構
今回、ブッシュ政権は、最大で75兆円の規模で金融機関の保有する不良債権を買い取ることを目標にした買取機構の設立を発表し、法案を議会に提出した。相当に強い反発が議会からあったが、来週早々にも通過する見通しである。それを楽観して、本日のダウは上がっている。75兆円とは巨額だが、これは現在の金融危機を解決するのに十分であるかどうかはまだ分からない。
商品経済的合理性のモメントが勝つか、政策的関与のモメントが勝つか?
では最終的にはどちらのモンメントが勝つといえるのだろうか?もし大手金融機関の破綻の連鎖がリーマンとワシントン・ミューチュアルで止まるなら、政策的関与のモメントが勝つといえるかもしれない。不良債権買取機構の機能によって金融危機は次第に落ち着いてゆくことだろう。
だが、はたしてこれで本当に終わりになるかどうかはまったく分からない。予想外の突発的な出来事によって、いきなり恐慌突入の危機が高まらないとも限らない。
そうした突発的な出来事の予測には、やはり予言も一つの重要なリソースとなる。次に予言を見てみよう。
■金融システム全般のメルトダウン
10月2日、75兆円規模の「金融安定化法案」がやっと米下院を通過し成立する運びとなったが、それにもかかわらず相場の暴落、金融機関の破綻、実体経済の収縮の連鎖は停止せず、それどころかはるかに加速して進行しつつある。
ダウも10月3日の777ドルの下落からさらに下落し、10月9日の終わり値は前日値675ドル安の8579ドルまで下落した。ダウが1万4124ドルの史上最高値を記録した2007年10月6日のちょうど一年前の水準からみると約35%の下落である。
1929年の大恐慌では2日間で23.1%、そして1987年のブッラクマンデーでは4日間で31%下落した。
これらの過去の例から比べると一年で35%の下落はさほど驚くべきものとはみえないかもしれないが、大恐慌時にはその後5年でさらに下がり、株価は29年時の約10分の1にまで下落した。今の相場がこれと同じような経過をたどらないとも限らない。
一方、1987年のブラックマンデーではFRBの巨額の資金投入で危機は回避され、その結果株価は短期間で上昇に転じ、翌年の88年には史上最高値をつけるようになった。今回の危機が政府の迅速な対応によって早期に終結し、再度上昇に転じる可能性も指摘されている。
 
ヤスの備忘録 歴史と予言のあいだ
http://ytaka2011.blog105.fc2.com/blog-date-200810.html
http://ytaka2011.blog105.fc2.com/
 
 
 












リーマンショックに関する予測・予言
■どちらのシナリオになるのか?
大恐慌のシナリオを辿るのか、それともブラックマンデーのシナリオになるのかは今のところ断言できないように思う。しかし、一般的には前者の大恐慌シナリオか、さらにこれを上回る事態になるとする意見が圧倒的に多い。その可能性も十分にあるだろう。
いずれにせよ、どちらのシナリオになるかは現在行われている各国の政府介入が成功するのか、それとも商品経済的合理性(資本の論理)が勝つのかにかかっている。
短期金融市場の収縮
現在の金融危機の基本的な原因が、際限なく拡大した金融資本による無原則な投資システムと、それが作り出した金融派生商品の破綻という、現在のグローバルモデルの破綻にあることはまちがいない。
だが、金融機関の実際の破綻のいわば引き金になっているのは、短期金融市場の収縮である。
短期資金の貸借が行われる銀行間市場(インターバンク・マーケット)である。銀行は日々の業務の決済を行うために相当な資金を準備しておかなければならないが、個々の金融機関で資金の過不足が生じ、支払いが困難になる金融機関も出てくる。このため、資金に余裕がある銀行から資金が不足している銀行へ貸し出しが行なわれ、日々の業務の決済が円滑に行われるよう保証のが銀行間市場である。参加者は銀行に限られ、信頼性も高いため無担保で融資は行われる。
一方、銀行間市場に参入しているどの金融機関もかなり多くのCDSなどの金融派生商品を抱えており、相当に大きな損失を出している。これは、他行が破綻するのではないかとの疑心暗鬼を銀行間に生む。その結果、短期資金の融通が困難になり、運転資金に困った金融機関から連鎖的に倒産するという図式である。
各国政府、中央銀行の介入
このような切迫した状況で、金融機関の連鎖倒産を防ごうと、各国政府と中央銀行はさかんに金融介入を行っている。それは、短期金融市場への膨大な資金投入、銀行のコマーシャルペーパー(社債)の購入などの銀行間市場の支援策のほか、国際的な協調利下げ、預金の政府保証、金融機関合併の仲介などの対策、そしてさらには、破綻した金融機関の国有化などのより積極的な政策に乗り出している。
政策的介入が勝つか、それとも破綻の速度が速いか
いま起こっていることを一言で言えば、各国政府の政策的介入は金融システムの破綻を止めるためにあらゆる処置を取っているが、最終的に政策的介入が勝つのか、それとも金融破綻のスピードが速すぎ、結局政府は破綻を止められないのかが問われているということだろう。それはまさに、政府介入が勝つのか、それとも商品経済的合理性(資本の論理)が勝つのかのレースである。
ECB(EU中央銀行)の資金供給
EU諸国全体の金融システム安定のために設立されたECBは、各国同様短期金融市場に膨大な資金を供給し、銀行間市場を復活し、金融機関の連鎖的破綻を阻止しようとしているが、それが思ったような結果が得られていないという。
それというのも、資金供給を受けたものの金融機関の疑心暗鬼は深く、供給された資金を緊急用の自己資金として保管し、他行に融通していないからだという。
これではせっかくの資金供給もまったく無意味である。これはEUのみならず、米国でも起こっているはずだという。
リーマンのCDSの清算会と連鎖倒産
なぜこれほど金融機関相互の疑心暗鬼が深いのだろうか?それは、金融機関が保有している債権や金融商品にかけられているCDSの清算会が近く行われるからだという。
CDSとは、債権や金融商品を販売した金融機関が破綻した場合、その損失額の保証をうたった保険商品である。CDSを販売した会社は、購買者から毎月保険金を受け取る代わりに、万が一金融機関が破綻したときには損失額を保証しなければならない。
リーマン・ブラザースは先月破綻したわけだが、10月10日(日本時間10月11日)、リーマンが販売した金融商品のCDSに対する清算会が行われることになっている。リーマン経由のCDSがどのくらいの規模に及ぶのかははっきりしていない。だがこの清算会でその規模が明確になるというのだ。
そうなるとこれを保有している債権者は当然支払いを求めてくることから、支払い請求に耐えられずに破綻する金融機関がかならず出てくると見られている。
リーマンの後にはAIGなどの清算会がぞくぞくと控えており、こうした一連の清算会が終わらないうちは金融機関相互の疑心暗鬼も消えることはないといわれている。
いやそれどころか、明日以降、清算会によって支払い請求を求められた金融機関の連鎖倒産が相次ぎ、金融システム全体のメルトダウンが実際に引き起こされる可能性も否定できないかもしれない。
この辺の事情はぜひ「田中宇氏」の記事を読んで欲しい。
主流の意見、追いつかない政府介入と経済破綻
どんどん悪化するこうした情勢をみて、どのメディアでも主流の意見は、「いまの政府の介入では、現在の悪化する経済の速度に対応することはできず、破綻は免れないだろう」というものだ。
ストラトフォー
しかしこうした状況にいたっても一貫して楽観的な姿勢を貫いているのは、このブログでも頻繁に紹介しているストラトフォーである。
ただストラトフォーも、読者からあまりに見通しが楽観的だとして袋だたきにあっているようである。こうした読者の声に答えて、ストラトフォーは経済問題に対する自らの立場を明確にする記事を出した。かなり示唆に富んだ内容なので要約する。
・われわれはあくまで地勢学的立場から経済を理解することである。
・地勢学にとってもっとも重要なのは、与えられた状況で国家が生き残るためにはどのような行動に出るのか予想することである。
・したがって、われわれは経済の法則といわれるものがそれほど国家から独立しているとは思われない。経済の自立性というのは基本的に幻想だと考える。国家は生き残るためにはあらゆることを行うはずだ。
・国家にとって、経済をコントロールすることはさほど難しくない。いままでの歴史が示しているように、経済は国家の経済政策によってしっかりコントロールされてきた。
・したがって問題は、現在の金融破綻は政府の経済政策によってコントロール可能な水準にあるかどうかということである。
・われわれは十分に可能だと考える。1989年には米国で貯蓄貸し付け組合の破綻から金融システムがメルトダウンしそうになったが、このとき政府は債権整理機構を作り不良債権を買い上げることで問題を処理した。
・この時にはGDPの6.5%に上る公的資金が政府によって投入されたが、今回はまだGDPの5%が投入されたにすぎない。まだまだ余裕がある。
・それでも今回の問題は規模が大きすぎ、コントロールは不可能だという意見もあるが、最後の手段としては主要な金融機関を国有化してしまえばいいのである。国の体制は変わるが、国家と社会は生き残る。
・そのための資金がないという議論もあるが、われわれの社会は管理通貨制である。財源がなければ通貨を刷ればよいのである。
・通貨を印刷して財源にするとハイパーインフレがおこり、経済がマヒするという意見もあるが、それは通貨の発行がコントロールできなくなったときの状態である。コントロールすればハイパーインフレは起こらない。
・いずれにせよ、金融機関の国有化も含め、政府の最大の関心は国家のサバイバルである。その点から見ると、今回の問題は国家のサバイバル能力を越えるものではない。問題は管理され得る。
ストタトフォーは以下の地図で「国家の経済管理能力」を色分けして表している。
finance
青   高い経済管理能力を持つ国家
緑   比較的に高い経済管理能力を持つ国家
黄色  経済管理能力が低い国家
赤   ほとんど経済管理能力を持たない国家
白   データが入手できない地域
■金融機関の国有化
こうしたストラトフォーの意見をみると、それなりの合理性があるように思う。ストラトフォーは金融機関の国有化を今回の金融破綻を押さえ込む一つの有効な手段としているが、実はこれに共鳴する意見が一気に増えてきていることも事実だ。
いまPBS(米国公共放送)などの番組をみると、民間のエコノミスト、FRBの元理事、研究機関のエコノミストなどが口をそろえて「国有化」を一つの有力な方法として推奨するようになってきている。
ただ、そうした意見でももっとも得影響力が大きいと思われるのは、政府の介入の徹底的に排除を提唱していた新自由主義者の牙城「ウォールストリート」に掲載されたカリフォルニア大学バークレー校のブラッド・デイロング教授のコラムである。彼は「この金融危機を乗り越えるためには、政府が金融機関を保有する国有化」が唯一の解決策だろうという。このコメントを紹介したアジアタイムスは、「最初に国有化が宣言されるとしたらそれはシティバンクなのではないか」という。
すでにアイスランドなど、国内の主要銀行が破綻し、これを国有化したが、これが世界的な流れになるかもしれない。
グローバル経済モデルから国家資本主義モデルへ
国有化などを伴う政府の経済介入が金融危機を最終的に押さえ込むことに成功するのか、はたしてそれとも、今回の危機がこれまでのあらゆる歴史的な体験を越えており、政府の対応が追いつかず、経済システムの破綻まで拡大するのかはまだ分からない。
しかし、政府によって押さえ込まれるにせよ、また破綻するにせよ、国家と社会が存続する限り、金融・経済のシステムは再構築されることは間違いない。
はっきりしていると思われることは、どちらの方向に進もうが、グローバル経済モデルは完全に終焉し、混乱が収まった後には一国資本主義型内包的発展モデルという、いまとはかなり異なったシステムが現れるのではないかということだ。
このブログでは「一国資本主義型内包的発展モデル」などという、あまりに長い名称を使っていたが、今回からこれを改め「国家資本主義モデル」と呼びたいと思う。
もし今回の金融危機の解決策として「金融機関の国有化」が政策として一般化するならば、それは「国家資本主義モデル」へのシフトを表しているのではないだろうか。
当然、いきなり国有化が発表される前に、公的資金の投入という手法が試みられるだろうが。
米国民の怒り
しかし、これからどのような方向に進にせよ、今回の金融危機と7500億ドルに上る金融安定化法案の通過が米国民に引き起こした激しい怒りは否定しようもない。
CNNやABCなどの主流テレビは米国民のパニックを静める報道を行っているが、ローカルなラジオ局やネットラジオなどを聞くと、米国民の怒りの大きさがよく分かる。
怒りの矛先は先頃議会を通過した「金融安定化法案」である。「なぜ国民税金を投入して好き勝手にやってきた金持ちを救わなければならないのか?」、「われわれを苦しめている詐欺的な金融システムの番人をなんで国民が救わなければならないのか?」など心情的なものが多い。
だが、そうした意見の中には、米国民の心を捉える事に成功したプロのエコノミストの意見もある。
キャサリン・オースティン・フィッツ
キャサリン・オースティン・フィッツは、1989年、第一次ブッシュ政権の住宅都市開発省副長官で、大手投資銀行ディロン・リードの取締役であった人物である。現在は投資コンサルタント会社、「ソラリ」のCEOである。
彼女は、金融業界の内部を深く知る立場にいるにもかかわらず、金融業界と中央政界の癒着を告発し、命を狙われた人物である。ウォールストリートを去った後、国民のエコノミストを標榜し、あらゆるメディアに出演して現在の金融危機の背後で何が起こっているのか解説している。「Coast to Coast AM」では常連である。
■フィッツの反論
他のエコノミストとともに、フィッツは今回の金融安定化法案に強く反対する論陣をはり、多くの米国民の心を捉えた。以下が彼女の意見である。
・今回の金融危機の原因の一つはデリバティブ(金融派生商品)の破綻である。
・しかしデリバティブはほぼ無尽蔵に存在しており、その損失額の全体像は見えない。
・ここまで問題が大きいと、これを作り出した金融機関とそのシステムそのものをすべて破綻させ、まったく新たなシステムへとつくりかえる以外に根本的な解決の方法はない。(スクラップアンドビルド)
・だとするなら、問題を作り出した現在の金融機関とそのシステムを政府が巨額を投じて救うことは、間違いである。破綻する金融機関は破綻させるべきだ。
・政府が公的資金を投ずるべきは、破綻しつつある金融システムの影響を最小限に押さえ、実体経済を救済することである。
・7500億ドルもあれば、政府系の住宅ローン機構を作り、いまローンが払えず破綻しつつあるサブプライムローンの債務者を救い、住宅の差し押さえの連鎖を止めることができる。
・ローンの支払いを保証し、差し押さえの連鎖を止めることができれば、住宅価格の下落を止めることができる。時間が経てば住宅価格は上昇に転じるだろう。
・すると、住宅は担保価値を取り戻すので、サブプライムローンを組み入れた金融商品(CDO)にも価格がつくようになるであろう。
・多くの地方銀行はこうした金融商品を多くの保有しており、それから出る損失が経営破綻の基本的な原因になっている。これが貸し渋りの原因になっている。
・だとすれば、住宅価格を上昇させることに政府が公的資金を投じれば、地方銀行の経営は改善し、貸し渋りもなくなるだろう。この結果、実体経済は救われるのである。そうした上で、必要のなくなった金融システムはすべて破綻させるべきだ。
この論理が正しいか間違っているかはともかくとして、これが多くの米国民に受け入れられ、政府の金融政策に強く反対する根拠となっていることは間違いない。
心情的な反発がきちんとした論拠を持つ論理へと昇華した場合、それは気持ちの問題を越え、明確な要求を持つ政治的な運動にもなり得る。そのような運動が実際に起こるかどうか、注視する必要があるだろう。
■WebBotの予言
「WebBotの予言」も有名になりいろんなブログで取り上げられるようになっているためご存知の読者も多いかと思うが、その最新予言を紹介する。
9月21日、「WebBotプロジェクト」の主催者であるクリフ・ハイとジョージ・ウレは「Coast to Coast AM」に出演し、これまでの予言の内容をさらに細かく解説した。その内容は、数日後、ジョージ・ウレのサイト、「Urban Survival.com」に要約され発表された。以下がその大要である。
・かねてから発表しているように、9月22日から27日に起こる出来事をみると、10月7日、午前7時10分(グリニッジ標準時間)にどのような出来事が起こるのか予想できる。
・いわば9月22日から27日の期間は、10月7日に放出されるエネルギーの方向性を先行的に決定するような期間となる。それを準備する出来事が起こるはずだ。
・10月7日の出来事はおそらく経済関連であろう。それは軍事関連ではないと思われる。このエネルギーの放出は2009年3月まで続く。
・10月15日に大きなエネルギーの放出がある。この日を基点に起こる出来事は軍事関連であると思われる。
・12月10日には、西海岸の北部の大西洋岸で巨大地震が発生する。それから2日後の12月12日には、今度は東海岸で似たような規模の地震が発生する可能性がある。
・その後、2009年春には、米国民の不満が爆発した暴動や内戦の危機が到来する。そのまま「2009年地獄の夏」へと突入する。
・2009年は「変容の年」となるはずである。2009年の晩夏には「多くの人々が突然と姿を消す現象」を目撃することになる
・「WebBotの予言」は的中するとは限らない。当たるときは当たるが、外れるときは大きく外れる。上記のすべてが外れることを真に願っている。
以上である。ここで興味深いのは「9月22日から27日に起こる出来事みると、10月7日、午前7時10分(グリニッジ標準時間)にどのような出来事が起こるのか予想できる」とされていることである。この期間に起こった一番大きな出来事は、商業銀行の最大手の一つであるワシントン・ミューチュアル銀行の破綻であろう。10月7日に起こる事件は経済関連であるとされる。政策的な介入では追いつかないような規模の金融機関の破綻が起こるのであろうか?
■WebBotの予言
ところで、WebBotプロジェクトは、10月7日午前7時10分に経済関連の大きな出来事があるといっていたが、10月6日、7日、9日、10日の4日間の株価の暴落をみると、ある程度的中したのではないかと思う。
10月6日の深夜、WebBotプロジェクトの代表であるクリフ・ハイとジョージ・ウレは、ネットラジオのレンスドットコムに出演し、10月7日以降どのような出来事が起こるのか詳しく解説した。すでにブログの投稿欄にも書いたが、重要だと思われるので再度きちんと書くことにする。
高い感情エネルギーの蓄積過程と放出過程
10月7日は感情価の高いエネルギーが一気に放出される日である。しかし、感情エネルギーの蓄積と放出とわれわれが呼ぶ過程が具体的に何を指しているのか説明しておきたい。
感情価の蓄積過程
それは、いつ空襲があるともしれない環境で、毎日「今日は空襲があるのではないか」と脅えながら生活するような過程である。そのような過程では人々は過度に緊張し、感情価の高いエネルギーが蓄積される。これを「Building Language」という。
感情価の放出過程
放出の過程とは、予想を越えた出来事が次々と起こり、人々がそれがなんであるのか理解して驚愕し、高い感情価のエネルギーが放出される過程を指す。
したがって、10月7日午前7時10分というのは、この日に特定の出来事が起こり、それですべてが終わるという一回切りの過程ではない。そうではなく、この日から予想を越えた出来事が相次いで起こるため、結果として高い感情価のエネルギーが連続的に放出され続ける過程をいう。要するに、10月7日午前7時10分とは過程の開始点である。
10月7日と9月11日との違い
9月11日にも同じような放出過程があった。この日のエネルギーの放出は7日間続き、その後5日間で徐々にもとの状態に戻っていった。
これに対し10月7日では、高い感情価のエネルギーの放出は2009年3月までという恐ろしく長い期間続くことになっている。それはつまり、来年3月まで驚くべき出来事が相次いで発生するということだ。
また、10月7日が放出日となるというデータは一年以上前から存在したが、現在のエネルギーレベルにいたったのは2008年2月である。これは信じられないくらい長い期間、高いエネルギー状態が維持されていることを示している。これはこれまでで最長の記録だ。これまでは72日が最長であった。
エネルギーが放出されるエリア
こうしたエネルギーは、40%が経済関連、40%が軍事関連、そして20%が環境異変関連という割合で、3つのエリアで放出されるはずである。
2009年3月以降
エネルギーの放出が終了する2009年3月には、社会状況が根本的に変化し、われわれはまったく異なった環境のもとで生きることになるはずだ。
来年の3月からは、アメリカのみならず全世界で、民衆による革命や反乱が頻繁に起こるだろう。特に「2009年地獄の夏」というキーワードがいま非常に高い感情価をもっているので、来年の夏にはアメリカを中心に革命や内乱が起こるはずだ。
革命運動の象徴となる人物
将来アメリカで起こる可能性のある革命・反乱運動には、シンボルとなる人物が現れる。その人物はナオミ・ウルフである。われわれの言語分析では、「ナオミ・ウルフ/革命/反乱」という言葉の組み合わせが異常に高い感情価を保持している。これは来年の3月以降、放出の過程に入るはずだ。
12月11日と12日
次にやってくる危機的な時期は12月21日11日と12日に発生する巨大地震だ。北緯32度から36度の地域(特に北米西海岸と東海岸)に居住する人は注意すべきだ。
以上である。
将来の変革運動の象徴、ナオミ・ウルフ
ナオミ・ウルフは、かつてはフェミニズム運動の旗手であり、現在では市民運動の象徴的な存在となっている人物である。以下がウィキペディアにある彼女の写真とプロフィールである。
wolf
「米国サンフランシスコ生まれ。イェール大学で学び、ローズ奨学金を得てイギリスのオックスフォード大学ニューカレッジで博士号を取得。男性優位社会におけるファッション業界と美容業界によるイメージ戦略が、いかに女性が不当に搾取し痛めつけているかを告発した処女作『美の陰謀 女たちの見えない敵』が国際的ベストセラーになり、一躍著名人となった。次作 Fire with Fire では新たな女性のエンパワーメント(連帯による政治的な力の獲得)の方法を、また『性体験』では思春期の女性について、さらに Misconceptions では女性の出産について論じている。
1999年に大統領候補アル・ゴアの選挙コンサルタントとして、ゴアを厳しく批判する発言をし、「ベータを捨て、アルファになれ」という流行語を生む。学者でもあるフェミニストのカミール・パーリア(Camille Paglia)は彼女を「ヤッピー・フェミニスト」(yuppie feminist)と評した。」
昨年彼女は、ブッシュ政権の独裁化を強く警戒し、市民による抵抗を呼びかけた本「アメリカの終わり(The End of America)」を発表しベストセラーとなっている。
いまウルフは、現在のアメリカに対する強い危機感から、「アメリカの終わり」の内容を広める運動を展開している。彼女のセミナーはYoutubeなどでみれるが、驚異的なアクセス数になっているという。英語が分かる読者の方はぜひ見てほしい。
コルマンインデックス
最後に、ここでコルマンインデックスを改めて確認しておきたい。改めて読んでみると、その正確さが証明されるような思いがする。これまでのコルマンの発言を列挙する。
Night5 2007年11月18日~2008年11月12日
DAY6  2008年11月12日~2009年11月7日
「まずDay5で基軸通貨としてのドルを崩壊させる大きな事件が発生するが、それはNight5にさしかかる時期ではアメリカと中国との協力によって崩壊は遅延させられ、一時的には何事もなかったようにシステムは再構築されるだろう。だがこれは長くは続かない。Night5の終わりからDay6の始めにかけて早晩崩壊し、新しい意識と秩序の出現に席を譲る」
「2006年11月23日から2007年11月18日までのDay5には世界経済の本格的なパワーシフトが起こる。国際通貨システム(ドルを基軸通貨としたシステム)の何らかの崩壊が発生するだろう。これは左脳を中心とした分析的な文化から右脳を中心としたより直感的な文化へと原理がシフトすることの反映として起こる。この結果、これまでの世界経済システムでもはや経済成長が達成できないことが明らかとなり、崩壊を余儀なくされる。」
「2007 年11月18日から2008年11月12日までのNight5では、既存の勢力(西欧)は強権的な反動的手段によってシステムの最終的な崩壊を食い止めようとするだろう。もし国際的な通貨システム(ドルを基軸通貨としたシステム)が崩壊するのなら、Night5には経済行為が中央集権的に管理されるシステムが導入されることだろう。」
実際、ほぼこのスケジュールで進行してことは間違いなさそうだが、ここでいう「Night5には経済行為が中央集権的に管理されるシステムが導入される」とは「金融機関の国有化」を含む「国家資本主義モデル」の登場のことだろうか?
さらに、今の時期に個人が何を経験するのかも述べていた。
「Day5から始まる秩序崩壊ー強権による維持ー最終的な崩壊というリズムは当然個人にも当てはまる。マヤカレンダーは意識進化の予定表である。であるなら、個人の生き方もこのリズムにシンクロしていると考えて間違いない。古い自己の崩壊と新しい自己の誕生である。この変化に抵抗するものと受け入れるものがいるだろうが、だれもこの変化を避けることはできないだろう。」
「この覚醒がもっとも強まるのがDay5以降であるとされる。したがって先に述べた「秩序崩壊ー強権による維持ー最終的な崩壊」というリズムは、「新しい自己の覚醒ー古い自己の復活と押し戻しー覚醒した自己の確立」というリズムの裏面なのだという。Day5では、覚醒へと向かうこのリズムと力を、現実の生活の中で多くの人が実感するようになるとコルマンはいう。」
この金融危機とともに、それも10月7日くらいから、われわれのスピリチュアルな変化も起こってくるのだろうか?
■WebBot予言の検証
いつもは現状の確認から始めるのだが、今回は順序を逆にして予言の話題から先に書きたい。
このブログの読者の方から8月26日の記事で紹介した8月3日配信WebBot予言内容がかなり的中しているのではないかと指摘を受けた。そこでこのWebBotの予言の的中率を検証したところ、いまのところかなり当たっていると思われ、未来の状況を予測するうえでかなり重要となると思われるので、この話題から先に書く。
以下は、2008年8月9日に更新した記事「いまがぎりぎりの別れ道5」で紹介したWebBot予言の8月3日配信の要点である。再度お読みいただきたい。
8月3日配信の要点
・最初は9月27日から10月28日まで、そして次は11月24日から2009年1月4日の期間の2度にわたって、「ビルダーバーガーズによって実質的に支配された現在のマーケット」が決定的に崩壊する出来事が起こる。
・最初の期間には「予期しなかった出来事」が起こるが、一方後半の出来事ははるかに深刻なインパクトをもつ。
・第二の出来事の影響は、2009年10月まで9カ月間は続くことになる。
・この両期間は、アメリカにおける自然災害などの物理的な被害を含む。前者の期間は「暴風雨」「異常気象」と関連するが、後者の期間は「12月に発生する地震」や「国民をパニックに陥れるために引き起こされた人為的な破壊」を含む。
・市場が崩壊してもアメリカの苦難はこれで終るわけではない。それは深刻な不況の始まりにすぎない。この不況は2009年11月まで悪化の一途をたどり、2012年まで続くことになる。
・この不況によって、健康保健や生活保護などのセイフテティネット、および金融や通貨のシステム、ならびに交通、住宅、安全などの社会の基本的なインフラが全面的にリセットされた状態となる。
・「崩壊」という言葉が強い感情価を持つ。この言葉は夏の終わりの時期にかけて感情価がより強くなる。
・9月の終わりころ、先物市場で投資家を混乱させる出来事が起こる。
実際に起こったこと
上の予言を要約すると、9月27日から10月28日までの期間と11月24日から来年の1月4日の2つの期間で市場は崩壊するが、前者の期間には予想外の出来事から株価は暴落し、後者の期間の暴落は実体経済により深刻な影響を与えるだろうということだ。
われわれはまだ最初の期間にいるわけだが、1~2日のずれはあるものの、最近起こった出来事をみるとほとんど的中しているといっても差し支えないように思われる。起こったことを時系列でたどると明確だ。
最初の期間(9月27日から10月28日)で発生したこと
9月29日
金融安定化法案否決
9月30日
ダウ暴落、米国債券価格は暴騰、ダウは777ドル安
10月3日
米国議会は7000億ドル(約70兆円)の公的資金投入を柱とする金融安定化法を成立
10月6日
ニューヨークダウ株式市場暴落、ついに1万ドルの大台を割る、前日比マイナス800.06ポイント
10月9日
NYダウ9000ドル割れ、終値678ドル安 5年5カ月ぶり安値
10月11日
NYダウ一時8000ドル割れ 東証暴落 終値8276円 下落率戦後3番目
10月12日
G7 公的資金投入で合意
10月13日
NYダウ暴騰 936ドルと史上最大の上げ幅
10月15日
NYダウ急落 733ドル安
10月16日
前日終値比380・24ドル安の8197・67ドルまで値を下げた
10月17日
ダウ反落・127.04ドル安の終値8852.22ドル
10月18日
NYダウ反落、127ドル安の8852ドル
これを見ると明らかだが、WebBotのいう「予期しなかった出来事」というのは、「金融安定化法案否決」であったと推測できる。これ以降、株価は乱高下しつつも、まさにマーケットの崩落を予告するかのように暴落しているからである。WebBotでは27日からこの期間に入るとされていたが、実際に引き金が引かれたのは29日だった。2日のずれである。
次に何が起こるか
WebBotの予言がもし的中すると考えるなら、市場が次の暴落の時期に入るのは11月24日から2009年1月4日の期間である。
とすると、10月29日から11月23日までくらいの期間、市場は落ち着くか、または一時的に上昇し、一種の安堵感が出てくるのかもしれない。米大統領選挙のご祝儀相場といったところか。
そして、11月24日前後、つまり11月の最終週あたりになると金融政策の有効性を疑問に付すようなんらかの出来事が発生し、相場は下落のトレンドに入るということか?
これはあくまでWebBotの予言が今後も的中すると仮定した場合に予想できることだが、いまのところはなんともいえない。
LIBORの急落
しかし、上記の予言内容と相反するニュースもある。本日、10月18日、銀行間融資の金利であるLIBORが急落した。
いま問題になっているのは、銀行が相互に日々の運転資金を融通しあう銀行間市場において、相互の破綻懸念による銀行の疑心暗鬼から融資が行われず、そのため資金に欠乏した銀行が貸し渋りや貸しはがしに走っているという状況である。
銀行の疑心暗鬼の度合いは、LIBORと呼ばれる銀行間融資の金利の高さに表れる。一昨日までのLIBORは史上最高ともいわれる記録的な高さであったが、昨日から急落し、この4年で最低の水準になった。
これは銀行の疑心暗鬼が緩和し、銀行間市場が正常に戻ったことを意味するといわれている。このことから、ストラトフォーのように「金融危機は終息しつつあり、金融システムは比較的に早く正常化するだろう」という楽観的な意見もある。
反応しなかった市場
LIBORの急落は、金融システムが正常化しつつあることを示す重要な指標である。本来なら、市場には安心感が広まりダウは上昇してもよいはずである。
しかしながら、18日のダウは一時的に上昇したものの、最終的には前日比127ドル安の8852ドルで終わった。市場は反応しなかったようだ。
これは金融危機がまだ去ってはいないことを示しているのだろうか?反対に、10月28日を待たず金融システムは急速に安定を取り戻し、WebBotの予言は外れて行くのだろうか?しばらく見て見ないといまのところは何ともいえない。
金融危機と国家資本主義システムの台頭
ただ、この金融危機が継続するとするなら、はっきりしていることは一つあるように思う。これまでこのブログでも何度も取り上げているように、この金融危機をきっかけにして、小さな政府を標榜し、グローバルな投資と市場の機能に依存したこれまでのグローバル経済モデルから、経済を国家か全面的に管理する国家資本主義のモデルへの体制的なシフトが進んでいるということだ。
金融危機を押さえ込む政策が体制の転換を迫る
1929年に始まり30年代に深化した大恐慌の時代がそうであったように、金融危機と不況の深化をなんとかくい止めようとして政府が介入するが、介入が効をそうさなくなるとさらに直接的な経済管理を政府が実施するというように、危機の進行とともに政府は管理機能をどんどん強化させ、その結果が国家資本主義への移行につながるというプロセスでシステムの転換が達成されるのであろう。
この視点から現在の各国の金融政策を見ると面白い。10月3日に通過した米国の金融安定化法案は、金融機関が保有する不良債権を政府の決めた価格で政府が買い取り、資金を金融機関に投入するというものであった。しかし、一時は株価が上昇したものの、マーケットの不安感を払拭することはできず、再度相場は大幅に下落した。
さらなる金融危機の進行を食い止めようと、緊急に開催されたG7では、必要とあれば個別金融機関への公的資金の直接投入も辞さないことが決議され、その結果株価は史上最高といわれる高騰を示した。
しかしながら、株価はその後も乱高下を繰り返しつつも大きく下落するトレンドにあることは間違いない。それとともに、金融危機から派生した貸し渋りや貸しはがし、さらにローン金利の上昇が発生して実体経済を直撃し、大恐慌をしのぐかもしれないといわれるほどの深刻な不況に突入する可能性さえ指摘され始めている。
これに対処するために、各国の金融当局にはさらに直接的な介入が求められている。
その方法の一つは、個別の金融機関への公的資金の投入を越え、金融機関そのものを一時的に国有化してしまうことである。これを求める意見が強くなっていることは前回の記事で書いた。
銀行間市場の一時的廃止と国家管理
だが、いま各国政府で真剣に検討されている方策はもっと国家管理の方向へ踏み込んだものであることが伺える。
先に書いたように、いま金融危機の引き金になっているのは、金融機関の日々の資金繰りを支えている短期資金市場(銀行間市場)が、金融機関相互の破綻懸念から機能しなくなっていることにある。これがどういうことであるか前回や前々回の記事で詳しく書いた。
銀行間市場は、どの国でも金融システムが正常に機能するための重要な前提である。この破綻は何としても食い止めなければならない。
FRBやEU中央銀行は、短期資金市場に資金を提供する方法として、銀行の保有するあらゆる債券類、それに社債などを買い上げ、これと引き換えに資金を供給する方法を採用したが、金融機関の疑心暗鬼は一向に収まらず、貸し渋りや貸しはがしは実体経済に深刻な打撃を与えている。
先にも書いたように、今日のところはLIBORは大きく下がっているが、これがいつまで続くのか分からない。銀行間市場の正常化につながるのか、または危機が継続するのかはっきりしない。
もし危機が継続するとなると、政府のはるかに強い介入が必然となる。
米国とEUの考え方の大きな違い
しかし、米国もEUも公的資金の投入を柱に銀行間市場を安定化させることには同意しているが、介入の方式には米国とEUの間には相当に大きな違いがあるようだ。
米国の考え方
必要とあれば公的資金の投入も辞さないが、銀行の社債や債権を買い取るなどの操作に限定し、極力直接的な介入を避け、あくまで市場原理を機能させながら処理させたい。
EUの考え方
危機の深刻度にもよるが、もし間接的な資金投入で問題が解決しない場合、銀行間市場を廃止し、銀行間の金融をすべて政府が行う体制に移行するべきだ。
金融全般の国家管理
当然、どの程度まで危機が進行するかによる。LIBORの急落が一時的なものに止まり、引き続き銀行間市場の機能不全から相場の下落や実体経済の収縮が止まらないような場合、銀行間市場の停止とその機能の国家管理という強力な政策が必要になってこよう。
それは、日常的に発生するすべての大口の短期資金需要のリクエストに政府自らが対応し、資金を融通する形となるはずだといわれている。政府が直接資金を供与し、銀行間での融通はなくなるのだから、これまでの銀行間の疑心暗鬼もなくなるということだ。
元の市場には戻れなくなる金融分野
もちろん、こうした政策は一時的な政策である。実施された場合、米国、EUとも2009年の夏頃までには正常な銀行間市場に復帰させたいと考えているようだ。
だが、銀行間市場は金融機関の運転資金を日常的に融通しあうもっとも重要な制度である。この制度なくしては銀行経営が成り立たなくなる。この制度に対する銀行の依存度は極めて大きい。
したがって、もしこの制度全体を国有化した場合、銀行の運営に政府が深くかかわることとなり、その結果、市場原理への復帰は実質的に不可能になるだろうという。
本格的な国家資本主義の出現?
さらに、このような状況では、国家管理の対象となる領域は銀行間市場に限定することはできなくなるはずだともいわれている。
政府が短期融資を保証することは、政府が金融システム全体の運営に責任をもつということである。そのような状況では、融資が焦げ付き破綻する銀行が出たとしても、金融システム全体への影響を恐れ、破綻させることはもはやできないであろうという。そのため、銀行の破綻を防止する規制やセイフティネットを事前に構築し、各銀行をその範囲内で経営させるようにしなければならなくなるはずだという。
一言で言えば、高度経済成長を実現したかつてのジャパンモデルの金融管理の手法である護送船団方式のようなものが、ほとんどの先進国で一般化するのではないかというのだ。
そうなると、かつての市場経済にはもはや簡単には戻れない。
金融危機の進行とともに進む国家資本主義化
いまわれわれが目にしている過程は、危機の進行に対応する必要から政府と国家が体制を転換させてゆくという過程であろう。それは以下のような図式となる。
「金融危機」→「政府の介入」→「より激しい金融危機と実体経済の減速」→「政府のより強化した介入」→「さらに激しい危機と実体経済のさらなる減速」→「政府の徹底した管理強化」→「国家資本主義の出現」
この過程がどこまで進むかは、現在の金融危機や経済危機がどこまで進み、そしてどの時点で政府の管理が効をそうするのかにかかっている。LIBORの急落などによって銀行間市場が早期に正常化するならば、国家資本主義というほどの体制転換は起こらない。
歴史の主体としての国家資本主義
いすれにせよ、国家資本主義が出現するならば、それはこれから展開する世界史の基本的なメインプレーヤー(主体)となるはずだ。投資銀行やヘッジファンド、そして市場原理主義に基づく「小さな政府」がメインプレーヤーであったこれまでの時代とは大違いである。
ウォーラスティンの記事
海外のメディアでは、国家資本主義の台頭を告げる記事が一気に増えている。その代表として、このブログでもときどき取り上げている20世紀最大の歴史家とされるイマニュエル・ウォーラスティンの記事をみてみる。以下が要約である。
・確かに現在の金融危機の直接的な原因は、いまの金融システムの構造が作り出したものだ。だがその背景は、1)米国の覇権の決定的な終焉、2)経済の長期波動であるゴンドラチェフサイクルの下降局面にあることの二つにある。それは歴史の長期的な構造転換が原因だ。
・なので、現在の国家や社会はこの危機の通過後、二度と元の状態には戻らないことを意味する。それは決定的な転換であり、経済のグローバリゼーションを主体とした体制は完全に過去のものとなった。
・では次にやってくる体制はなにか?それは国家によって管理された資本主義の体制である。
・この体制は、中道左派の穏健な社会民主主義的体制から、極右の独裁的な体制までさまざまな形態を取り得る。
・だがいずれにせよ、国家資本主義のようなシステムではナショナリズムが強化されざるを得ず、国家間の緊張と衝突は今後避けられなくなるだろう。
以上である。
われわれがいまいる段階
これがウォーラスティンの見方だが、これから分かるように、われわれはいまこれからの世界史の展開を主導するメインプレーヤーである国家資本主儀が出現しつつある段階にいる。
では、この出現の段階以降、どのような展開となるのであろうか?これまでこのブログで何度か書いて来たが、おそらく以下のような展開になる可能性が大いにあり得ると考える。詳論は後の記事に譲るが、今回は大まかな段階だけを述べる。
第一段階 国家資本主義体制の樹立とその拡散
第二段階 地域的決済システムとしての地域経済圏の成立
第三段階 地域経済圏相互の緊張と衝突
第四段階 地域経済圏の全面衝突としての第三次大戦
こうなってくると、どうも以前に紹介したババ・バンガやエノク予言など、その他多くの「ロシアのヨーロッパ侵攻」に関する予言に近似してくるような気がする。
そのような展開になる世界史的な過程に、いま本当われわれは生きているのだろうか?
WebBotの最新予言
やはり予言も、未来の方向性を予想するうえで参考になることは間違いない。
ただ、これはすべての予言いえることだが、予言は信じる、信じないという基準だけでみるのではなく、予言から十分な距離を取り、その内容が的中するのか、それとも外れるのか、客観的に観察するがよいだろう。
10月12日、WebBotは最新言語分析結果を発表した。いつものように100ページを越える量なので、今回はその要点のみ、それも10月11日配信分の要点のみを紹介する。
新しいシンボルの出現
・「新しい象徴」が登場し脚光を浴びるようになる。この「新しい象徴」は「イルミナティに反抗する儀式」で使われるため、「イリミナティの道具」と化している「キリスト教教会/組織」によって弾圧される。しかしながら、この運動は「今後9ヶ月」で全世界的な規模で広がるだろう。
・「新しい象徴」は「意識の波動をコントロール」する新しい科学やテクノロジーと結びついている。「6ヶ月後」くらいから「物質宇宙を意識の力によってコントロール」できることの「目に見えるはっきりした実例」が「非主流派の科学」から「リーク」されるだろう。
フランスの民衆運動
・今後2ヶ月で「全世界的な規模の民衆運動」の波が「フランス」から起こる可能性がある。この運動は「ある人物」ないしは、その「人物」の「思想/書物」が脚光をあびて発生する。この「人物」が「すでに死んでいる哲学者」やその「思想」が改めて注目されることになるのか、それとも「現在生きている個人」とその「思想」が脚光を浴びることになるのかは定かではない。いずれにせよ、この人物の「思想」が「全世界的な規模の民衆運動」にとって重要になる。
・この「人物」は「際立った存在感」と「髭」、そして「魂に深く触れる」ような「目」を特徴としている。さらにこの「人物」は「塗装された橋」と関連を持ち、「学校に入っていない」が「とても教養がある」人物である。
・さらにこの「人物」は「犯罪」や「血を流すこと」とかかわり「刑務所で苦しみ」を味わった過去を持つ。
・「権力側」はこの「全世界的な規模の民衆運動」を恐れ、この「人物」とその「思想」を徹底的に「弾圧」しようとするが、逆にこの「人物とその思想」を全世界的に広めてしまうことになる。
イギリスで発生する「自主的生産運動」のようなもの
・「過激な手工業のギルド」のような組織が台頭する。そのため、「スコットランド」と言語を共有する「英国の北部」で「政治スキャンダル」が発生し、「英国」における「人気のある社会政策/社会契約」に深刻な影響を与えることになる。
・この中心になるのはある「ギルド/組織」で、これは「当局/君主制/大企業」と「秘密裏の闘争」を行うことになる。この組織の「食料抵抗運動」は大きくなり、この組織の「命にかけても変えない信念をもつ」人物の「柱となっている思想」のため、「英国」では「文化的なシンボル」となるほど人気が出る。
・この「ギルド/組織」は「食料をめぐる問題」で当局と衝突するが、最終的には勝利する。
・この「権力から嫌悪される組織」は「権力側」が予期しないほどの成功を収め、「全世界のヒーロー」となり、「世界の民衆の保護者」として称賛される。
・こうした一連の出来事は「2008年/2009年の冬」から起こり、特に「1月の末」になると運動は一気にグローバルに拡散する。
続きはおそらく明日
WebBotの分析結果について
本日、WebBot予言の最新版、10月18日の配信が届いた。これがこのシリーズ(9月ー10月配信)の最後である。
ところでWebBotの分析結果の配信だが、まず2ヶ月単位で一つのシリーズが完結する。それぞれのシリーズには「ALTA 209」のようなシリーズ名がついている。一つのシリーズで約100ページを少し超える分量がある。ちなみに今回のシリーズは「ALTA 709」である。
各シリージはパート1からパート6まであり、分析が終了し次第送信されてくる。今回訳出したのは、10月11日配信分の一部である。この配信分の掲載は引き続き行うが、本日入手した10月18日配信のパート6の内容はさらに衝撃的である。できるだけ早くアップしたいと思うが、いまのところ時期は未定である。
続く
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2008-10-19 | 予言一般
 
ヤスの備忘録 歴史と予言のあいだ
http://ytaka2011.blog105.fc2.com/blog-date-200810.html
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南オセチア紛争
■南オセチア紛争
8月8日から始まった南オセチア紛争だが、前回の記事では、それが何を意味するのか二通りの仮説があるとを述べた。それは以下である。
1)地域大国としてのロシアの台頭
「中東を緊張緩和させるためにはロシアとの関係は不可欠であり、このため米国とNATOは、カフカス地域におけるロシアの勢力圏は認めざるを得ないであろう。」
2)イラン攻撃を行うための下準備
「南オセチア戦争は、ロシアの周辺地域を不安定化させ、ロシアがイラン戦争に介入できない状況を作ることにある。グルジアのサーカシビリ政権は米国、NATOそしてイスラエルの完全な傀儡政権なので、これを操作しカフカス地域を不安定化させる起爆剤として使った。当然、ロシア軍は反撃してくるだろうが、これはロシアのグルジア侵略を大げさに宣伝し、ロシアを孤立化させるのは好都合である。」
この先情勢が急変する可能性もあるが、今のところは1)のシナリオが正しかったようだ。原油価格は大きく上昇していないし、また2)の仮説が予測したように、旧ソビエト共和国が連鎖的に不安定化する兆候はみせていない。
反対に、目立っているのはロシア軍の展開である。ロシアはフランスの仲介で軍を撤退させることに合意したが、規模は大幅に縮小したものの、主要都市にはいまだに軍を展開し、サーカシビリ政権に圧力をかけている。これに対し、米軍およびNATO軍はまったく軍事的に手を出せないことが明らかとなった。米軍とNATO軍はまさに張り子の虎であり、カフカスの旧ソビエト連邦に属する地域は、ロシアの勢力圏に入らざるを得ないことが次第に明らかになりつつある。
これまで、あらゆる予測や予言を読んできたが、短期的な予測としてはストラトフォーの精度を越えるものはないように思う。したがって今回も、ストラトフォーの観測をみてみたい。
その後のグルジア情勢と今後
・グルジアからロシア軍が完全に撤退することはない。ロシアは軍を効果的に使い、カフカスの旧ソビエト連邦諸国や東ヨーロッパの旧衛星国に対して、ロシアが大国として復活したことを主張し、この地域では親米政権は許されないことをはっきりさせる。
・したがって、ロシアの次の目標は、サーカシビリ大統領の辞任と親ロシア政権の樹立である。これが実現するまでロシアは圧力をかけ続けるだろう。
・米国は、人道支援のための物資輸送の名目でミサイル駆逐艦を黒海に派遣した。これは米国の軍事力との誇示とも受け取れるが、ロシアにとってはさほど脅威ではない。まず駆逐艦は、ロシアの黒海艦隊がブロックしているポチ港をあえて避け、南部のバツミ港に入港した。これは黒海艦隊との対峙を避けるためであろう。
・一方、米国が限定的な戦闘能力しかもたない駆逐艦をあえて派遣したことは、米国が微妙なメッセージを送っていることを意味している。すなわち、1)米国は、その気があれば米海軍を黒海に派遣する能力をもつが、2)今はその気はまったくない。したがって、3)いまのうちに自重してほしいというメッセージである。
・グルジア国内はいまだに臨戦態勢にあり緊張していため、サーカシビリ政権に対する支持は高いが、情勢が徐々に正常化するにしたがって、今回の発端があくまでグルジアによる先制攻撃にあることは明白なので、国民はこのような事態にグルジアを引き入れたサーカシビリ大統領の責任を問い始めるだろう。将来、サーカシビリ大統領は辞任する可能性が大きい。ロシアは望みを達成するだろう。
・ところでポーランドは、米国のミサイル迎撃システムの配備を受け入れた。これに対しロシアは「核攻撃も辞さない」と脅しをかけている。戦略的にみてポーランドは大きな間違いを犯したと思われる。どうみてもこの地域では、米軍やNATOは軍事的にほとんど頼りにならず、一方ロシアは地域的な覇権国として台頭してくることは明らかなので、ポーランドはロシアとの間でバランスを取るべきだった。第二次大戦からそうだが、ポーランドはパニックに陥るとかならず間違った選択をする傾向がある。
以上である。要するに、ロシアは地域的な大国として再登場したので、他の諸国はこの現実を受け入れ、これに適応して行かねばならないだろうということである。ということは、グルジア紛争は、第2の仮説の「イラン攻撃に向けたロシア不安定化作戦」ではないことになる。もしイラン攻撃が近ければ、地性学的リスクの増大から原油価格は確実に上がるはずだが、原油はバーレルあたり114ドルから115ドル近辺を変動しているのが現状だ。
■今回の紛争の目的
今回の紛争は、グルジア軍による南オセチアの首都、ツヒンバリの攻撃が発端である。グルジア軍は米軍とまったく同じ装備で、米軍とイスラエル軍の軍事アドバイザーの指揮のもとで攻撃が行われた。事実、数名の米軍軍人がこの戦闘で死亡しており、なおかつ数名がロシア軍の捕虜になっているという。
なので、米国政府が今回の攻撃を事前に知らされていなかったことはありえない。攻撃は、米国の明確な許可のもとに行われた可能性すら大きい。
だとするなら、なぜ米国はこの攻撃を止めなかったのかという疑問が出て来る。
これに対し、以前の記事では以下のように書いた。
「ブッシュは、このまま行くと次期大統領選挙では、共和党には勝ち目がなく民主党のオバマが次期大統領になる可能性が強いと判断している。劣勢を逆転するためには、9.11やイラク戦争開戦時のように、悪の枢軸のような敵を外部に作り、米国民を熱狂させ、悪を倒す強い大統領候補としてマケインを宣揚する必要がある。今回、ロシアがグルジアに反撃したことは、新たな「悪の帝国」としてのロシアを出現させることになり、大統領選挙にとっては願ってもない。このシナリオにしたがって、CNNやFOXなど米国の大手マスメディアはすでにキャンペーンを開始した。」
日本と同じく、単なる政治的プロパガンダの手段とかしている米国大手マスメディアによる反ロシアキャンペーンは成功し、一時は見る陰もなかったマケインは復活し、支持率でもオバマと並んだ。以下の記事を参照願いたい。
「コロラド州デンバー(CNN) 米大統領選で共和党の指名獲得が確実なジョン・マケイン上院議員と、民主党の指名が内定しているバラク・オバマ上院議員の支持率が並んだことが、CNNとオピニオン・リサーチ社の最新世論調査で24日明らかになった。 」
今回の南オセチア攻撃には複数の目的が存在する。そのうちの一つは「ロシアという敵を作り出すことでマケインの支持率を上げ、時期大統領の座を確かにすること」であることは間違いないように思われる。
ということは、次の情報も蓋然性が高いことになる。以前の記事に紹介したが、7月22日、レンスドットコムに元石油メジャー重役のリンゼー・ウイリアムが出演し、大手石油メジャー重役の以下の発言を紹介した。
「注意したほうがよい。大統領選挙のときにかならずなにか大きなことが起こると思っていてくれ。マケインはわれわれの仲間である。われわれはマケインを時期大統領にするために全力をかける。」
だとするなら、このための戦略の一つが今回のグルジア軍による南オセチア先制攻撃だった可能性は否定できない。
■紛争の今後
もしそうであるなら、明日の民主党大会のオバマの大統領候補指名によって本格的な大統領戦に入るが、ブッシュ政権は、マケインの支持率を上げる必要性が出て来るたびにロシアを軍事的に挑発し、小規模な戦争をあえて起こす挙に出る可能性も否定できない。
その意味では、ロシア軍がグルジア国内に止まることは、いつでも挑発できるので、選挙戦の戦略上有利なはずだ。紛争は今後も続き、ロシア軍の完全な撤退は実現しない可能性が大きい。
■予期せぬ結果
ところで、2004年の大統領選挙でブッシュは、国内でテロ警報を連発することによって国民の危機感を高め、強い大統領をアピールすることで当選した。2001年の911にとられた手法と同じである。
今回は国内テロではなく、ロシアの脅威がその役目を果たすことになるはずだ。またアメリカ国民は確実にだまされる。
これまで米国の外交戦略は短期的なその場しのぎ的なものがほとんどだった。ソビエトのアフガン侵攻の折り、オサマ・ビン・ラディンを支援しその組織の成長を助けたのはその一例だろう。
しかし、こうした短期的な戦略はかならず想定外の結果をもたらすことも事実である。マケインの支持率を上げるためにグルジアに南オセチアを攻撃させたこと、ならびに悪の帝国としてロシアを仕立て、適当に挑発して強い大統領のイメージを強化する今回の作戦がこのままですむのだろうか?
筆者にはどうしてもそうは思えない。それはとんでもない方向に発展し、まったく予想していない結果をもたらす可能性があるように思う。今回は詳しく解説する余裕はないが、アロイス・イルマイルの次の予言が実現してしまうような状況は考えられないのだろうか?
「何が原因で戦争が勃発しますか?
すべてが平和だったが、突然、中東で新たな戦争が勃発し、地中海で巨大な艦隊が敵意にみちながら待機する。状況は緊張する。しかしながら実際の火種はバルカンで発生する。私は”巨大な人物”が倒れ、血にぬれた短剣が横たわるのが見える。すると一気に事は進行する。」
つまり、コソボへの紛争の拡大である。これについてはいずれ詳しく書く。
■変化のタイミング
ところで講演会でも述べさせていただいたが、多くの予言的なテキストを読むとそこには共通したモチーフがあることに気づく。それは以下の4点である。
1)ロシア軍のヨーロッパ侵攻
2)イスラム原理主義組織によるヨーロッパへの軍事侵攻
3)アメリカの内戦と分裂
4)次のローマ法王を最後に、ローマカトリックは崩壊する
もちろん、調査した予言がこれらの3つをすべて含んでいるわけではなく、予言によって1)と2)だけだったり、3)だけだったりする場合もあるが、これらは比較的に多くの予言みられる内容である。
こうした事態はいつ起こるのか?
これらは予言である。その意味では、こうしたことが実際に起こるかどうかは保証の限りではない。だが、それが起こると仮定した場合、それはいつ起こるとされているのだろうか?
ところで、もしロシア軍のヨーロッパ侵攻やイスラム原理主義の軍事侵攻が起こるとすると、それは米国が軍隊を海外から撤退させ、世界で軍事力の空白が生じていることを前提にするだろう。そう考えると、アメリカの内戦発生の時期が一連の出来事の発生を決めることになるのかもしれない。
その時期を明確に述べている予言はないが、そのヒントはさまざまなところに散見される。WebBotの予言などは期日が指定されているため、その他の予言と合わせ、これをベースにおおよそのタイミングを類推すると以下のようになる。
先の記事でも書いたが、この日は蓄積されている巨大な感情的なエネルギーが放出される日だとされている。ただ、この感情的なエネルギーの放出ということが、なにか特定の事件の発生なのか、それとも事件はなにも発生しないが、この日を起点に流れが大きく変わるだけなのかは分からない。具体的な出来事は起こらないことも考えられる。
2009年夏
10月7日のエネルギーの放出が引き金となり、米国社会を支えているシステムに根本的な変化が起こる。
2010年
2009年に起こった社会システムの変化に反抗する形でアメリカ第二革命(内戦)が勃発する。
すると、一連の事態が発生する時期は2010年前後なのかもしれない。
ババ・バンガ
今回、プラウダ、モスクワニュース、ロシアトゥデーなどのロシアの英字新聞を読んでいて発見したのだが、ブルガリアでもっともよく知られている予言者の一人にエバンゲリア・ディミトローバ(通称ババ・バンガ)という予言者がいることを発見した。彼女は1911年、ルピテ鉱泉の近くのペトリッチという町で生まれた盲目の予言者で、1996年に84歳で亡くなっている。
バンガはゲオロギ・ラゾノフ博士によってソフィアの「暗示学および超心理学研究所」で綿密な調査を何度も受けており、同研究所から予言の的中率は80%であると公式に認定されているという。
さらに、国から給料が支給される初の国家指定の公式予言者となり、歴代の首相や副首相も彼女の助言を得ていたとのことである。
また、戦時中はヒットラーがじきじきに訪れ、彼女の家から浮かぬかを出て行ったそうである。
彼女の的中した予言には次のようなものがある。
「恐怖!恐怖!アメリカの兄弟は鉄でできた鳥に攻撃され崩壊する。ブッシュ(やぶ)のなかから狼が吠えている。多くの無実の血が流される。(1989年)」
これは説明するまでもないだろう。911の描写である。ワールドトレードセンタービルは通称「ツインタワー(双子のタワー)」と呼ばれており、バンガの「アメリカの兄弟」という表現に近い。
「世紀の変わり目の年、1999年から2000年にクルスクは水で覆われ、全世界は涙を流すだろう。(1980年)」
これは、2000年8月12日に発生したロシアの原潜「クルスク」がバレンツ海において艦首魚雷発射管室で爆発を起こし、沈没した事故のことである。
この他、チェルノブイイ原子力発電所の事故、選挙におけるエリツィンの勝利など多数の歴史的な事件を的中させているという。
彼女の未来の予言でもっとも注目されているのが以下のものだという。
「すべてのものが氷が溶けるように消え去るが、ウラジミールの栄光、ロシアの栄光は残る唯一のものである。ロシアは生き残るだけではなく、世界を支配する。(1979年)」
この「ウラジミール」を、現在の首相の「ウラジミール・プーチン」と解釈する人も多いという。
さらに、彼女は多くの未来予言を行っており、それを時系列に並べると以下のようになる。実際ははるかに長いが、近未来の予言に限定した。
2008年
4名の元首や首相が暗殺される。インドネシアで紛争が発生する。これが第三次世界大戦の引き金となる。
2010年
第三次世界大戦が始まる。戦争は2010年11月に始まり、2014年10月に終わるが、核兵器と化学兵器が使われる。
2011年
北半球に放射能の雨が降り注ぐため、動物や植物は生きてゆけなくなる。イスラム教徒はヨーロッパでまだ生き残っている人々にたいして化学兵器で戦争を仕掛ける。
2014年
ヨーロッパはほとんど無人地帯と化す。
2018年
中国が世界のスーパーパワーとなる。
2023年
地球の軌道が微妙に変化する。
2025年
ヨーロッパの人口はまだ非常に少ない。
2028年
新しいエネルギー源の登場。ゆっくりとだが飢餓が地球上から消え去る。金星に有人探査を行う。
2033年
極の氷が全面的に溶ける。世界中で海水位が上昇する。
2043年
世界経済は繁栄する。ヨーロッパはイスラム教徒によって支配される。
どうであろうか?その年で起こることを断片的に語ったような印象だが、これから述べる「アロイス・イルマイル」と興味深い共通点があることに気づく。
バンガ:
「2008年。4名の元首や首相が暗殺される。これが第三次世界大戦の引き金となる。」
イルマイル
「私は”巨大な人物”が倒れ、血にぬれた短剣が横たわるのが見える。すると一気に事は進行する。2人の男性たちが3番目に高い地位の高官を消す。彼らは他の人々によって支払われた。3番目の殺人は起こった。 それから戦争は始まる。」
さらに、エノック予言との類似も興味深い。
バンガ:
「2011年、イスラム教徒はヨーロッパでまだ生き残っている人々にたいして化学兵器で戦争を仕掛ける。2043年、ヨーロッパはイスラム教徒によって支配される。」
エノック予言:
「イスラムの狂信者が決起してヨーロッパの国々を戦争で蹂躙し、それによって一切が激しく揺り動かされるであろう。西側ではすべてが破壊され、英国は打ち破られて、最も悲惨な状況に投げ込まれるであろう。イスラム狂信主義者とイスラム戦士は、長い年月にわたってその権力を維持するであろう。」
バンガによればイスラムは、2011年にヨーロッパに侵攻し、2043年には完全に支配しているが、これはエノック予言の「イスラム狂信主義者とイスラム戦士は、長い年月にわたってその権力を維持するであろう」とよく対応しているように思う。
どうであろうか?これらのことが幻想に終わることを望むが。
次に、「アロイス・イルマイル」のロシア軍のヨーロッパ侵攻の予言の全訳を数回に分けて書く。とにかく長いので、今回は前半だけである。講演会でもお渡ししたが、少し追加しているのでぜひお読みいただきたい。
ここで興味深いのは次の一節かもしれない。
「私ははっきりと3つの数、2つの8と9を見る。けれども私はそれが何を意味するか言うことができないし、時を述べることができない」
グルジア軍の南オセチア攻撃に反撃するため、ロシア軍がグルジアに侵攻したのは「2008年8月9日」である。つまり「889」であった。いまネットの一部のサイトではこの話題で持ちきりだが、注意したいのはイルマイルはバルカンでことが起こるとはっきり言っていることである。今回はバルカンではない。
アロイス・イルマイル (1894-1959)の予言前半
「何が原因で戦争が勃発しますか?
すべてが平和だったが、突然、中東で新たな戦争が勃発し、地中海で巨大な艦隊が敵意にみちながら待機する。状況は緊張する。しかしながら実際の火種はバルカンで発生する。私は”巨大な人物”が倒れ、血にぬれた短剣が横たわるのが見える。すると一気に事は進行する。
2人の男性たちが3番目に高い地位の高官を消す。彼らは他の人々によって支払われた。
3番目の殺人は起こった。 それから戦争は始まる。
1人の暗殺は明るい色の髪をした小さい黒人男性で、他の一人は彼よりほんの少しより背が高い。 私はそれはバルカンで起こると思うが、正確にそれを言うことができない。
戦争の前年にはたくさんの果物と穀物を採れた実り多い年であろう。第3の殺人の後にそれは一日で始まる。私ははっきりと3つの数、2つの8と9を見る。けれども私はそれが何を意味するか言うことができないし、時を述べることができない。戦争は日の出に始まる。彼は急速に現われる。 農民はパブでトランプに興じていると、その時外国の軍人は窓と入口を調べる。非常に黒くい陸軍で、それは東の出身である、しかししかしながら、すべてが非常に急速に起こる。私は3を見る、しかし私はそれが3日あるいは3週を意味するかどうか知らない。それは黄金の市から来る。
最初の戦闘は北西の海原で始まり、そしてスイス国境まで拡大する。レーベンスブルグまではドナウ川にかかる橋は存在しない(破壊される)。彼らはブルウォーター(海?)の南からは侵攻してこない。
密集した部隊(ロシア軍)は東からベルグラードに侵攻し、その後イタリアまで前進する。その直後、なんの警告もなしに3つの師団がものすごいスピードでドナウの北から西ドイツにラインに向かって進む。これは何の警告もなく起こるので、住民はパニックを起こし西へ逃れようとする。
多くの車で道は渋滞する。高速で侵入してくる機甲師団にとっては行く手を塞ぐあらゆるものは障害物である。押し潰して行く。レーゲンスブルグより上ではドナウにかかる橋は見当たらない。大都市フランクフルトには何も残っていない。ライン渓谷はおもに空襲によって破壊される。
3つの軍団がやってくるのが見える。下の方に位置する軍団は森林に沿ってやってくる。その後、ドナウ川に沿って北西に方向を転換する。それはプラハ、ババリアの森、そして北西に向かっているようだ。海原は南部の境になる。第2の軍団はサクソニアを通って東から西に進む。第3の軍団は北東から南西に向かう。いま地球のような球形の物体が目の前に見える。その上に飛行機の航路のような線が見え、それが砂から白い鳩の群れが飛び立つように飛ぶ。ロシア軍の3つの軍団は停止することがない。多くのカマドや溶鉱炉のあるルール地方に到達するまで、昼も夜も走り続ける。
第2の軍団はサクソニアからルール地方に向かって西の方角をからやってくる。これは北東から西の方角に進みベルリンに侵攻する第3の軍団と同じだ。昼も夜もなくロシア軍は疾走する。目標は明らかにルール地方だ。
すぐにブルーウォーター(海?)の向うから報復攻撃が行われる。しかし同じころ黄色い竜(中国)がアラスカとカナダを侵略する。しかしそれはそれほど遠くからは来ていない。
地球のような球形が目の前に見える。多くのハトが砂から飛び立ち、近くを飛ぶのが見える。すると、黄色いチリが雨のように降り注ぐ。プラハが破壊されるとき、それは始まる。(中略)彼らがそれを投げ始めるのは真っ暗な夜である。戦車はまだ移動中だが、戦車の乗員はすぐに真っ黒になる。それが落ちるとすべてが死に絶える。木も林も家畜も草もなくなる。家はまだ立っている。それがなんであるのか私には分からない。それは長い線だ。その線を越えるものは死ぬ。この線のこちら側にいるものは向う側に行くことはできない。すると疾走していた3つの軍団は進行を停止する。彼らは北の方角に行くしかない。もっているものすべてを投げ捨て、二度と戻らない。
黒海から北海までの地域に飛行機が黄色い粉を撒き散らす。黒海から北海までのエリアに、ババリアの半分ほどの大きさの死の地帯が作られる。この地帯では、動物はもとより、植物も死に絶える。ロシア軍の補給路は絶たれてしまう。
ハトの群れ(戦闘機の編隊か?)が砂から舞い上がる。西から南西に向かって2つの群れが戦闘区域に到達する。編隊は北に向かって飛行し、第3の軍団の行く手を阻む。西には多くの戦車がある。だが戦車は動いているものの、中の乗員はみな死んでいる。戦車はゆっくりと自動的に止まる。飛行機のパイロットは黒い箱を落とす。それは地上に到達する前に爆発し、黄色や緑の塵を撒き散らす。それが触れたものは、人間であろうが、動物であろうが、植物であろうが死んでしまう。一年間、生き物がこの区域に入ることは許されない。入った場合は死の危険が待っている。ライン地域では、やっと反撃が始まる。3軍団の兵士で帰還するものはいない。
これらの箱は悪魔のようだ。これが爆発すると、黄色と緑の塵と煙りが立ち上がり、人間であろうが、動物であろうが、植物であろうが、それが触れたものはすべて死ぬ。人間は真っ黒になり、骨から肉が削げ落ちる。
自然災害かそれに似たなにかが原因でロシア軍は突然と北に回避する。ケルンのあたりで最後の戦闘が始まる。ラインでは三日月が見え、それはあたかもすべてを焼き尽くしたいかのようにみえる。三日月は閉じたがっている。これがどういう意味なのか私には分からない。」
この続きは次回に書く。
個人的な印象
いずれ記事としてまとめて書きたいが、上の予言のようにことが進むとはまだ決定されていないように思う。おそらく、こうしたことが起こってもおかしくない状況になってゆく可能性はあるだろうが、このような状態に陥る最終的な引き金を引くのは、関わっている当事者たちである。しかし、これは自由意志の余地は大きい。十分に変更が可能なのではないだろうか?

ヤスの備忘録 歴史と予言のあいだ
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